こんにちは!
本日は、機内でよくCAさんが案内をする、「〜してください」的な言葉の裏の理由について、
元CAのミモが解説していきたいと思います。
航空機事故にも触れていますので、苦手な方は遠慮されてください!
お客様ご自身も、なんで?と思いながら従ってくださっていると思う、安全に関するご案内ですが、ひとつひとつ大切なワケがあってCAは、時には心を鬼にしてお伝えしています。
そういえば以前、こんな事件もありましたね…
→なぜ航空会社により手荷物収納の案内に違いがあるのか。【SNSのバーキン事件を受けて】
こんなことにならないためにも、是非本記事をお読みになり、少しでもご理解頂ければ、と、
一線を退いた者ですが、ひそかに思います。
ちょっと真面目な内容になります。
ではまいりましょう!
CAはなぜそんな案内をするのか理由一覧
「シートベルトをおしめください」or「航行中はお席にお座りになり、シートベルトをおしめください」
航空機に衝撃が与えられた時、もしくは揺れが起きた時にお客様にお怪我がないよう、お伝えしています。
主に離着陸の前にご案内するのですが、なぜかって、
航空機事故のほとんどは離陸後の数分間に起こると言われており、着陸も、それまでとんでもないスピードを出していた物体が止まるもんだから、危険なんですね。
何か起きた時のために、シートベルトを必ずして頂いています。
また、それ以外にも、航行中に案内をする場合があります。
飛行機の“揺れ“というものは、2つに大別できるのですが、それが、予測できる揺れ、と、予測できない揺れです。
予測できる揺れは風の変化など、パイロットがレーダーで感知し、事前にシートベルト着用サインを点灯させ、CAとお客様に危険を伝えることができるのですが、
予測できない揺れは、主たる原因が晴天乱気流で、レーダーで感知できず、突然なんの前触れもなく大きく揺れるんです。
これに遭遇してしまうと、シートベルトをしていないお客様は天井まで飛び、そのあと床に叩きつけられてしまうことも。
また、飛行機が飛んでいるのは空中ですので、揺れは縦とも限らず横もありえる。天井に飛んだお客様が、次の瞬間に離れたところの床に落ちる、など、そんな危険も起こり得ます。
参考URL→https://ja.m.wikipedia.org/wiki/ユナイテッド航空826便乱高下事故
「座席の背もたれ(テーブル、足置き)をお戻しください」
離陸前と着陸前に案内をしていますが、これは、緊急脱出する必要があった場合に、素早く航空機から逃げるため、細かいことですが案内しています。
背もたれに関すると、それに加えて、着陸時の衝撃が、背骨や腰骨に与える影響を軽くするため、という意味合いもあるようです。
テーブルも、加えて、離着陸時の衝撃が強かった場合、顔を打つことも考えられます。2次災害防止、ですね。
例えばエンジンに火災があり、緊急着陸をして、ドアを開けスライドを出し→全員脱出までに、90秒が目安であるそうで(「90秒ルール」については後述します)、簡単に言うと時間短縮のために、“機内の準備“として案内しています。
「荷物は上の棚か、座席の下におしまいください」
こちらも離着陸前に案内をしていますが、上の理由とほぼ同じで、素早い緊急脱出のための準備のために案内しています。
荷物が足元に広がっていたら、皆がパニック状態の中、電気系統がアウトしており照明もなかったら、足をとられ転んでしまい脱出が遅れてしまうことも。
また、航行中、突然揺れが起きてしまった場合、お手荷物が散乱していればしている分、宙に浮いて、それらがお客様に直撃する可能性も…
こういった理由から、CAは案内をしています。
「膝の上のちいさなお子さまは、親御さんと一緒にシートベルトをせず、しっかりとお抱きください」
上方向に揺れが起きた時(急上昇した場合)、ひとつのシートベルトを赤ちゃんと、お母さんが一緒にしてしまっていると、
その衝撃はすべて、ベルトに近い膝上の赤ちゃんにいってしまいます。
一見安全そうに見えるシートベルトの着用方法ですが、たいへん危険なので、CAたちはこのような案内をしています。
「膝の上には大きいお手荷物を置かないでください」
以前こちらの記事→なぜ航空会社により手荷物収納の案内に違いがあるのか。【SNSのバーキン事件を受けて】
で解説している、膝の上の手荷物案内、についてですが、今一度まとめると、
通路に転がると脱出の妨げになる/緊急着陸時の適切な姿勢が取れない/揺れにより浮き上がった場合危険である
と判断した場合に案内をさせていただいています。
守らないと、お客様ご自身の身の安全のためにも、
そして周りのお客様のお怪我につながってしまう場合もあるので、ご不便をおかけすることは承知の上で、CAは心を鬼にしてお伝えしています。
「トイレのご利用は、お2人までです」
これはあまりご存知ない方が多いと思います。
ときどき、小さなお子さまお2人を連れ、3人いっぺんにトイレを利用しようとする親御さんを見かけることがありますが、
これはNGなんですね。
なぜかって、トイレ内には酸素マスクが2つしか搭載されておらず、「急減圧」(航空機の与圧システムが壊れてしまったり、機体に穴があいてしまったりして、薄い空気に満たされてしまい、ひどいと気を失ってしまう現象のこと)が起きてしまった時に、
すぐ着用すべきマスクの数が十分でなくなってしまいます。
こういった理由から、トイレは1人、多くて2人しか同時には入れません。
参考URL→https://ja.m.wikipedia.org/wiki/サウスウエスト航空812便緊急着陸事故
根本となる「90秒ルール」について
90秒ルールとは
90秒ルールとは、航空機メーカーと、航空会社に求められるルールで、一言で言うと、
「緊急事態が起きた時、脱出にかけられる時間は90秒以内」という、さまざまな事故や研究の結果、国際的に定められたルールです。
航空機メーカーはそれに従い、ドアの位置や、脱出しやすい構造の座席を作らねばならず、
航空会社は、お客様を90秒のうちに脱出させるための手順をCAに叩き込み、CAはそれを必ずお客様に倣っていただくよう案内する責任があります。
航空会社ごとにこのルールに則り、定めた上で、上の案内一覧のように、CAはすべてのお客様にお伝えしています。
この90秒を守らないとどういう危険性があるかというと、
たとえばエンジン火災で緊急着陸した場合、それが燃え広がる可能性がぐんと上がってしまって、大爆発にもつながりかねません。
飛行機は、大量の燃料を積んでいますから、引火してしまうのです。
いろいろな航空機事故や火災事故の研究の結果、脱出にかけられる時間は90秒である、と定められたんですね。
90秒ルールを守り、全旅客、全乗員が助かった事例
有名な航空機事故ですが、こちら。
脱出を素早く行えたことで全員が生還しています。
参考URL→https://ja.m.wikipedia.org/wiki/チャイナエアライン120便炎上事故
90秒を確保するために、適切な案内をし、事前準備することで、1秒、2秒お客様の脱出時間に当てられるのです。
さいごに
本日は、CAはなぜそんな案内をするのか、という理由について解説しました。
ミモもCAになる前、飛行機を利用するたびに、理由なんてよくわかっていないまま「言われるし仕方ないよね」という感じでなすがままに従っていました。
CAになってから、訓練を経て、いろいろな航空機事故について触れる機会があり、その大切さを理解しました。
理解しているからこそ、お客様の命の為にも、きちんとお伝えしなくては、という義務感も生まれましたね。
また、ちゃんと案内できていないと、大先輩の目が光り、「ちゃんと安全について理解してる!?」というお叱りをいただいてしまうわけで、
新人の頃はもうかなりキョロキョロしては、漏れのないよう緊張をしてご案内をしていた記憶があります。
(ちなみに安全の案内に関しては人にもよりますが、全体的にANAよりJALの方が厳しい)
なのでお客様としてお乗りになる際は皆さん是非守ってください!
そして、こんなにもCAが「緊急事態」を想定して動いていることがおわかりいただければ幸いです。
サービス要員の前に、保安要員。
以上です!
またお会いできますように。