こんにちは!
つい先日、とある方がSNSで、
JALのCAの、機内での手荷物に関する案内の仕方について怒りの発言をし、
賛同する人、また反対する人さまざまおり、わりかし炎上するという事件がありました。
知らないよーって方はぐぐってみてください。
その投稿にはCAの顔写真も添付されており、
私自身、もうその方の気持ちになるといたたまれず、
すごい歯痒い気持ちと、同時に、航空会社はもっとこうした方がいいのでは、という思いが湧いてきました。
なぜこのような事が起こってしまったのでしょうか。
問題点を含め、元CAのミモなりに考察してみました。
ではまいりましょう!
事件の概要をさっくりと。
とある方がJAL(普通席、非常口座席ではない)に乗った際、エルメスのバーキンというブランドのバッグを膝の上に置いていたそう。(大きさはA4くらいですが、ぶ厚め。)
CAは安全性の観点から、そのバッグを座席下に収納するよう案内。
しかしお客様は拒否。
(その後バッグをどうしたかは不明)
そのお客様は、CAの案内の仕方と、他の人には案内をしていないのに自分にだけ収納しろと言われたことに腹を立て、SNSにそのCAの顔写真と、事の成り行きを投稿、そして炎上。
もうその投稿の内容やら、他の発言含め、恐ろしい、その一言でしたよ…
そもそもなぜ航空会社により手荷物収納の案内に違いがあるのか。
お客様に守っていただく安全に関する規定というものは、航空法を基に、航空会社それぞれで決めるものだからです。
ちなみに、そのルールを守らないお客様には、「安全阻害行為」と認定し、搭乗を取りやめて頂く、という措置を取ることも可能になります。
第七十三条の四附則第百六十四条の十五 (安全阻害行為等より七)
手荷物を通路その他非常時における脱出の妨げとなるおそれがある場所に正当な理由なく置く行為
国土交通省HP 「航空法」より引用
航空会社はそれぞれ、突然の揺れや緊急事態が起きた時、お客様の命を守るためにはどうしたらいいか、
いろいろなシミュレーションをしたり、あるいは過去の航空事故を元に定め、
CAはそれをお客様に伝えています。
ですので、上述した事件のお客様の膝の上の荷物に関しても、そのCAは、JALのルールに従い、安全に支障があると判断した上で、案内をしたわけです。
そして「他の人には案内をしていないのに自分にだけ収納しろと言われた」という発言ですが、そのお客様以外の方のお手荷物は、たとえ膝の上にあったとしても、JALのルールに従えば大きさや形、重さを総合的に考え問題ない、と判断したわけです。
それでも、同じ航空会社のCAなのに、案内にばらつきがある、という意見も多く聞かれます。
なぜ、そんなことが起きてしまうのでしょうか。
膝の上のお手荷物は、航空会社ごとにそれぞれのCAが、
「緊急事態が起きた時に衝撃を防止する姿勢が取れるか」(=頭を膝の位置まで落としかがめるか、もしくは前の座席の背に手を伸ばし、頭を下げることができるか)
「通路に飛んでいった場合、脱出の妨げにならないか」
「揺れにより浮き上がった場合、他のお客様に危険がある大きさ、形、重さがあるか」
といった視点で、それぞれのCAの担当エリア内のお客様の手荷物収納状況を確認し、判断して、案内してるんですね。
航空会社によっては判断に困った場合、案内のばらつきがでないよう、
他のCAの目で確認する、もしくはシートポケットの大きさを目安としてそれより大きければ収納して頂く、などというルールもありますが、
そんなような対策をしたところで、正直ばらつきが発生するのは避けらません。
どうしてもその時のCAの判断になってしまうわけです。
SNSの発言の中にはありませんでしたが、
この事件のお客様の心の中にも、もしかしたら、「以前JALに乗った時は、同じバッグを膝の上に置いていても何も言われなかったのに」という想いも潜んでいたかもしれません…
さらなる問題点
航空会社によりルールが違うことがまず第一の混乱材料だとして、さらに言えば、
ANAもJALも、持込手荷物の大きさには記載があるものの、膝の上のお手荷物に関しては、HPに細かく書いていないんですね。
(機内の安全ビデオや、アナウンスでも伝えていません)
ANAの機内持ち込み手荷物についての案内
身の回り品(ハンドバッグ、カメラ、傘など)のほか、下記条件の手荷物1個持込可。合わせて10kgまで。
手荷物は、3辺(縦・横・高さ)の和が115cm以内かつ、3辺それぞれの長さ55cm×40cm×25cm以内のもの。
・機内持ち込み手荷物は、ご自身で客室内の収納棚またはお客様の前の座席下に収納できるものに限ります。
・座席上の共用収納棚に入れる場合は、棚を開けた時に中の手荷物が滑り落ちないように収納してください。確実に収納されていない手荷物は、突然の衝撃があった場合に飛び出してお客様自身だけでなく、他のお客様を傷つける恐れがあります。
・通路・非常口など、非常時に脱出の妨げになる場所へ手荷物を放置することは、法令で禁止されています。前に座席のない席(スクリーン前・隔壁前)は、足元に手荷物は置けません。
機内に持ち込める手荷物の大きさの規定はしっかりと記載がありますね。
文での説明に合わせ、ANAの公式HPにはこのような図もありました。
ANA公式HPより引用
一番右のお客様の膝の上の大きめの手荷物に、大きくばつ印がついています。
が、膝の上の手荷物の大きさに関する記載はなし。
JALの機内持ち込み手荷物についての案内
数、大きさや重さなど、ANAとまったく同じでした。
・お手荷物はご自身で座席の下、または座席上の共用収納棚への適切な収納をお願いしております。
また、お手荷物を出し入れする際は周囲のお客さまへのご配慮をお願いいたします。
・通路、非常口付近など、非常時に脱出の妨げになる場所へ手荷物を放置することは、法令で禁止されています。
前に座席のない席(スクリーン前・隔壁前)は足元にお手荷物をおけません。
・お手荷物は、ご自身で収納棚へ収納できる範囲の大きさ、重さでお願いいたします。(ご自身で収納できないお手荷物を持ち込まれることにより、お客さま同士のトラブルやお怪我が発生しております)
一番上の文章によると、JALは、HP上では
お客様の手荷物の、座席の下か共用棚への収納を推奨しています。
ANAと同じく、文での説明に合わせ、JALの公式HPにはこのような図もありました。
JAL公式HPより引用
そしてその下には、膝の上の手荷物について、このような絵も。
あらゆる危険性を示しています。
JALの方が、絵も使い、しっかりと説明している印象を受けますが、
だとしても、ANAと同様に、どのくらいの大きさの手荷物から膝の上に置いてはいけない、という詳細が書かれていません。
こうなるとどうしても、現場のCAの判断にのみ、委ねられるわけです。
航空会社はこうした方がいいのでは、とミモが考える。
安全に関してお客様に守って頂くルールの理由を何らかの方法で示すべき
安全に関するルールの、その理由を、ビデオやアナウンス、冊子にし各座席に搭載するなど、
お客様に守らないとどうなるのか、なぜCAがそういった案内をしているのか、簡潔にでも説明すべきではないかと考えます。
航空会社によって案内が違うとなると、そりゃお客様は戸惑いますし、ストレスもかかります。
「この航空会社はこういった理由をもって、このルールをあなたに課しています。」とさえ伝えておけば、初めて聞くルールでも、そういうことか、なら仕方ないか、と納得できますよね。
見える化すべき
上述した、ルールの理由を示した上で、さらに、
「じゃあどのくらいのサイズまで膝の上に乗せていいのか」なにかモデルとなるようなアイテムを、飛行機に乗せるべきだと思います。
透明のプラスチックバッグでも用意して、
その中に入ればok!
など、見える化すれば、お客様も納得せざるを得ないのではないでしょうか。
理由+基準をしっかり示して、統一すべきです。
安全に関する案内のビデオの最後にそれを持ち歩いて、説明して回るなど、そのくらいしないと、
今回の事件のように、納得されないお客様はこれからもでてくると思います。
さいごに
本日は、なぜ航空会社により手荷物収納の案内に違いがあるのか、についてお話ししました。
なぜこの記事を書くに至ったかという理由については、
まず第一に、事件のCAさんの立場に立つと、安全の為に案内しただけなのに…というCA仲間として、どうしてもつらくなってしまったことと、
あとはやはり、ミモも現役時代、この事件のお客様のように納得して頂けないシーンに何度も何度も遭遇した経験があったからです。
新人の頃は「ルールなのになんで従ってくれないんだろう」と泣きたくなっては、
必死に理由を説明しまくってましたが、
冷静に考えると、航空会社によって案内が違うからお客様は混乱されているわけで。
そりゃすんなりと納得されない方もいるだろうなあと、辞めた今となっては考えます。
だからこそ航空会社には、お客様のためにも、そして働くCAのためにも、もう少し対策を講じて頂ければと思っております。
果たして事件の結末はどうなるんでしょうか。
本当に、SNSって恐ろしいです。
以上です!
またお会いできますように。