こんにちは!
本日は、機内でお客様が暴れた時のCAの対応についてお話ししていきたいと思います。
最近話題のピーチアビエーションの緊急着陸のニュースですが、
世間でもピーチのCAさんに対してであったり、その当該旅客に対してであったり、
かなり賛否両論、話題となっていましたね。
調べても調べても、監視カメラがない限り事の真相は闇の中なわけですが、
この記事では、ざっくりとその事件の流れを追いつつ、
では実際にCAはどうやって対応していくのかという、
基本的なセオリー的なものを、日系航空会社に5年間勤めたミモが、解説していきたいと思います。
ではまいりましょう!
まず事件の流れはこんな感じ
ピーチが運航する釧路発関空着APJ126便が2020年9月7日(月)、新潟空港に臨時着陸しました。読売新聞によると、マスク着用を拒否した男性が客室乗務員を威圧し、新潟空港に着陸し、当該乗客を降機させました。
Youtubeに投稿されている動画によると、当該の乗客は出発前から乗務員とトラブルになり、これを拒否していました。このため、周囲の乗客を移動して、13時13分に出発したものの、フライト中に大声をあげたため機長が臨時着陸を決断し、降機を求めました。
新型コロナウイルス感染症が流行し、世界の航空会社が搭乗時にマスク着用を求め、日本の航空各社も同じようにマスク着用を乗客に呼びかけています。この着用を巡るトラブルで臨時着陸した事例は初めてとみられます。
2020/9/8 flyteam HPより引用
マスクをしないまま搭乗されたお客様が、
臨席のお客様と乗務員とトラブルになり、緊急着陸に至った、とのこと。
そもそもピーチのガイドラインでは
ピーチアビエーション公式HPより引用
「機内ではマスクの着用をしてください」との記載がありますが、
その例外であったり、「マスクを着用しないと搭乗できない」とは書いてありませんね。
JAL公式HPより引用
ちなみにこちらJALのガイドラインですが、
「必ずマスクを着用してください。*幼児または着用が困難な理由のあるお客さまを除く」と例外を含め記載がありますが、
マスクをしないからといって搭乗拒否となる、あるいは緊急着陸となる、までは言及していません。
ですので、当該旅客がマスクをしていなかったことは航空会社的にもピーチ的には問題ではないが(倫理的、他の方への配慮的には問題だが)、それを起因としてトラブルに発展してしまった、その結果緊急着陸に至った、ということになります。
機内でお客様が暴れた時のCAの対応について
本題です。
上記のニュース以外に見かけた、当該旅客の行動と、その場合のCAの基本対応について書いていきます。
旅客Aが旅客Bについて不快感を表した場合
上記のニュース記事では他旅客を移動させて、となっていますが、実際は当該旅客も席を移動したとのこと。
今一度整理すると、
この事件の場合ですと、
旅客A=臨席のお客様、旅客B=マスクをしていない旅客ですね。
旅客Aは、旅客Bがマスクをしないでいることを、不快に思い、それをCAに訴えてきた場合。
基本的には旅客Aを、他の空いている席にご案内します。
快、不快は人それぞれの基準があるので、その張本人ではなく、気にしている方を移動させることがセオリーで、
他の例ですと、
旅客A=臨席のお客様、旅客B=大きめの音量で映画をご覧になっている方の場合。
(あまりに度が過ぎていた場合は口頭注意します。もっと多くの方が不快に思ってらっしゃる可能性もあるので全体を見て判断しますが)この場合も、旅客Aを移動させます。
ピーチの機内の状況がわかりかねますが、
こういったセオリーがあるにも関わらず当該旅客の席をも移動させたのだとなると、
多くの声が上がっていた、あるいはあまりに言動が危険なので乗務員の目が届く場所へ移動させた、など、たくさんの事を鑑みての判断であったのではないかと推測します。
騒いだり、威嚇をする場合
ニュース記事にもありますが、
機内で大声を出し、乗務員を威嚇した、という点。
その威嚇がどの程度のものなのかにもよりますが、
この時点で、乗務員が「身の危険を感じた」のであれば、それは“安全阻害行為“となり、
注意をしたのにも関わらず続くようなのであれば、
(後述する命令書のようなものだと思ってください、実際は種類が少し違うのですが)とある書面をCAはお客様の前で読み上げ、
さらに厳しい注意を行います。
また着地での警察の待機要請や、機内での拘束という手段に移る場合もあります。
航空会社によりますが、
機内には手錠や拘束具を搭載しており、それを使用して暴れるお客様を拘束し、着地までその状態で飛行を続けた、という事例が過去にもたくさんあります。
ベトナム航空(VNA)メルボルン発ホーチミン行き航空機の機内で、オーストラリア人乗客(男性:53歳)が暴れて、乗務員に両手を拘束される事件が発生した。1日付VNエクスプレスが報じた。
この男性乗客は離陸後、歯痛を訴えて、眠るためにワインを注文した。ワインを飲んで、しばらくすると、急に騒ぎ始めたという。近くに座っていた女性乗客がたまらず、乗務員を呼んで、注意を促したところ、この男性乗客は自分の持ち物を女性乗客に投げつけたうえ、乗務員に殴りかかったという。
乗務員は騒ぎを収めるために、暴れた男性乗客を他の座席に移したが、そこでも暴れたため、機長の指示により、この男性乗客の両手を拘束したという。タンソンニャット空港に到着後、この男性乗客は空港警察で取調べを受けた後、解放された。後日、当局はこの男性乗客に500万ドン(約2万円)の罰金処分を下した。
こちらなどですね。
ですので一点ミモがピーチの対応の中で気になる点を挙げるのであれば、なぜ緊急着陸となる前に拘束して着地まで輸送、という判断にならなかったのか、ということなのですが…
拘束すら考える間も無く、飛行を続けるのに危険が迫っている状況だとパイロットは感じ、緊急着陸を決断したということでしょうか。
CAの業務を妨害する場合、着陸前にテーブルをすぐに戻さない場合
このどちらも“安全阻害行為“となります。
ANA公式HPより引用
上のイラストの8つは、航空機の安全に支障を及ぼす可能性があるとし、“航空法の安全阻害行為“に該当するため、
国土交通省公式HPより引用
口頭注意でも収まらない場合、こういった命令書をお客様にお渡しし、面前で読み上げ、
さらに厳しい注意を行います。
この場合も、着地での警察の待機要請や、機内での拘束という手段に移る場合があります。
また、これはご本人の投稿と思われるTwitterで見かけたものですが、
「テーブルは書き終わったらすぐ戻します」ってやつですね。
これも立派な航空法に反する安全阻害行為です。すぐ戻したと仰っているようなのでこの行為だけで罰せられるということはありませんが、いくつも重なるとなると、悪質であると見なされ、もっと厳しい対応に移る可能性も出てきます。
…とこのピーチの機内で起きたとされる事に対するCAの基本対応はこういう感じで、
機内でお客様が暴れた時のCAの対応の流れを簡単にまとまると、
まず口頭注意→(収まらない場合は)命令書などをお客様の前で読み上げ厳重注意をするor拘束→(拘束もできる状態ではないほど言動が危険で、他のお客様に危害を及ぼす可能性がある、あるいは飛行に危険があると判断されると)緊急着陸
となります。
さいごに
本日は、機内でお客様が暴れた時のCAの対応についてお話ししました。
こういった安全阻害行為に関してはCA達は何度も何度も筆記試験また実技試験を受けており、
客室の長であるチーフはもちろん、
他CAも、お客様の拘束方法などについてはかなりの頻度で実際にお客様役を立て訓練を行なっています。
ミモがこのニュースを見て一瞬「!?」となった、
緊急着陸の決定ですが、
よく考えてみると、きっとまだニュースなどでは明かされていないような、当該旅客の危険性をCAとパイロットが判断した結果なのだと思います。
なので、いったい何をしたんだろう、あの方は…
そして監視カメラ、機内に設置しませんか?
今回の件をはじめとして、いろいろと機内で起こる事件を録画できれていれば、意見の食い違いなども解決する手立てになると思うのですが。
パワハラ防止にもなると思うし。
いや、働きづらいか。
以上です!
またお会いできますように。