こんにちは!
本日は、ミモが日系CAとして働いていた5年間のうちで遭遇した、機内で起きた事件について、お話ししていこうと思います。
去年CAを辞めたばかりですが、
もう記憶が消えていきそうなので、こちらに備忘録として残します。
今回は救急系と言いますか、前回→機内で急に、180cmの男性のお客様が私に向かって倒れてきた話。【フライト事件簿①】
よりもちょっとヘビーな内容なので、こういった話が苦手な方は見ないことをお勧めします。
ではまいりましょう!
機内でドクターコールをし緊急着陸した話。
フライト概要
かなり冷え込むとある冬の日、羽田7:30発沖縄10:00着のフライトにて、それは起こりました。
飛行機の機種は777-300ER。
普通席(エコノミークラス)には通路が2本ある、国内線では1番大きい飛行機です。
羽田→沖縄へのフライトは、フライトタイムは2時間半、
こちらの記事→ANAとJALのCA 国内線サービスの違いを徹底比較。【羽田✈︎沖縄】
でもお話ししていますが、
通常のお飲み物のサービスに加え、お客様に楽しんでいただけるようなサービスを盛り込んだフライトとなります。
ミモのポジション
CAは全部で10人。
ミモはわりと前方よりの、着席しているお客様から見て右側のR2というポジション。
わりと下っ端ポジションで、ギャレー担当です。
まだ国内線も慣れきっておらず、フライトが始まる前から緊張していたことを今でも覚えています。
目の前の仕事をこなすことにまずドキドキ状態、です。
ドリンクサービス中、呼び出しボタンが押される
ドリンクサービスも半ば、ミモのカートのコンソメスープが出切ってしまったので、一緒にカートを押していた先輩に一声かけ、
新しく作らねば、とポットを片手にギャレーに一人で戻ります。
コンソメスープの素を開け、今にも作ろうとしたその時、ミモの担当エリアではない前方から、「ポーン」と呼び出しボタンの音が聞こえました。
「主人の様子が少し変で…」と年配の女性に助けを求められる
「毛布のリクエストか、それとも何か飲み物のおかわりでも欲しいのかな?」など考えつつ向かうと、
ボタンを押した年配の女性が、隣の男性を指差し、戸惑いながら、「主人の様子が少し変で…」とのこと。
とくに焦った様子もなく、普通のテンションでおっしゃるので、何の気なくミモは男性に目を向けます。
隣を見ると薄目を開け、微動だにしない男性
その男性は座ったまま、薄目を開けていらっしゃいました。
「お休みになられてるのかな?」と思いつつも、
奥様が「変で」とおっしゃるのだから、ミモからも肩に触れつつお声をかけてみましたが、まったく反応がありません。
瞬きもほとんどされていません。
震える手で脈拍をとりつつ、浅くはありますが呼吸の回数を確認しました。
奥様曰く、既往症も無い、とのこと。
サービスにあたっているチーフに報告
訓練ではある程度の症状(貧血、出血、腹痛…など)と、その初期対応を習っているものの、そのどれにも当てはまらないため、ミモとしても混乱。
見える範囲に客室の長であるチーフがおりましたので、脈拍と呼吸の回数含めお客様の様子をすぐに報告しました。
とても普通の状態には見えなかったので、「ドクターコールが必要かもしれません」とそこまでお伝えした気がします。
すかさずチーフはドクターコールを行う
自分の目でも男性の容態を確認したチーフは、すぐにパイロットに連絡をし、
呼吸はされているものの、こちらからの呼びかけに反応がない、という状態はとても危険と判断、即ドクターコールを行いました。
看護師さんが名乗り出て、“脳梗塞の可能性“を提言してくださる
お医者様のお申し出は無かったのですが、女性の看護師の方がすぐに名乗り出てくださり、
ほとんど医療器具の無い機内の中、その男性を診ていただき、“脳梗塞の可能性“を提言してくださいました。
(ミモの記憶では、体を触れられ、左右の反応を診てらっしゃったような)
お客様を助けたい一心で動きつつも、どうしたらいいかわからないミモを含むCAにとって、
横にした方が良い、そして心肺停止に備えAEDをすぐ横に置いておいた方が良い、など、
緊迫した状況の中ほんとうにありがたい助言をその後もたくさんしてくださいました。
CAのこういった急病人のお客様対応の訓練では、
たとえば脳梗塞のお客様について、どういった初期症状で、どういった対応をして、などといったところまで細分化された事例は行いません。
マニュアルには、上述したような、機内でよくある貧血やら腹痛への初期対応などの記載はあるものの、
それよりも重篤な病気に関してはドクターコールなどの対応に移ることになるため、こういった状況をまず対処する立場であるにもかかわらず、情けないことに、深い知識がないんです。
目の前に苦しんでらっしゃるお客様がいるのに、ほんとうになに一つその方のためになることができず、悔しくて悲しかったことを今でも覚えています。
緊急着陸決定
その男性の状況、看護師さんの助言、パイロットが地上医師と相談した結果、すぐに直近の空港である大阪への緊急着陸が決定しました。
もちろん救急車の要請も。
ミモが呼び出しボタンの音を聞いてからおよそ10分といったところでしょうか。
チーフがその決定をし、お客様全員へその旨のアナウンスがなされている間に、
ミモ、他CA、そして力のあるお客様に手伝っていただき、そのお客様を客室最前方の床に寝かせ、横にはAEDを置き、すぐそばにCAがいる状態で着陸に至りました。
ドアが開いた途端に救急隊がいらっしゃり、
お客様を担架に乗せ、奥様と一緒に病院へ向かわれました。
さいごに
本日は、機内でお客様の容体が悪化しドクターコールをし、緊急着陸した話、というお題でお話ししました。
緊急着陸のその後ですが、
チーフ、そしてミモを含め何人かで救急隊を見送り、後処理を行っている中、
ほかのCA達は再出発まで、機内のお客様への状況説明とクレーム対応に追われていました。
ドクターコールをアナウンスでも行っていますし、つど説明もしていますが、
光景を見てらっしゃらない方にとっては目的地が急に変更され、予定やお仕事がある方はイライラ。
すべて終えた後、大阪からまた沖縄に向かって出発しましたが、
もっとできたことがあるかもしれない、とか、
ご本人、ご家族のことを考え、
メンタルボロボロのミモ含む前方担当のCAにも、
「レジャーの予約をしているんだけど、間に合わないけどどうしてくれるの?」であったり、
「先方との食事会に間に合わなくて、仕事が台無しになったら補償とかあるの?」
など、心ない言葉をいただき…
しかしその一方で光景を目の当たりにされていたお客様からは、
「大変だったね、心配だろうけど、ちゃんと休んで」などお声をかけていただいたり。
もうほんとうにいろんなことが一度に降りかかったフライトでしたが、
ちょっとやだなーと思ってしまう半年に一回ほどの訓練がどれだけ大切であるか、
機内という閉ざされた空間でCAにできることはめちゃくちゃ少ないけれど、その中でいかに効率よく動くことにお客様の命がかかっているか、
そして看護師さんってほんとうにすごいな、など、
とてつもなく多くのことを反省し学ぶことになった経験でもありました。
またその後ですが、命に別状がなかった、という一報をいただけて、その時は本当にホッとしたことを覚えています。
それでも、もっとできることがあったのではないか、と今でもふとした時に考えます。
ミモはたった5年の在籍期間でしたが、
CAの中でもこういった経験が多い方で、
10年働いていらっしゃる大先輩でも、ドクターコールの経験が無い方ももちろんいらっしゃいました。
なので、滅多にないことではありますが、
こういったことにも冷静に対応できる人材が、CAの適性の一つでもある、
ということを身をもって実感した一つの経験でしたね。
以上です!
今でもあのお客様とご家族、そして助けてくださった看護師さんのお顔が忘れられません。
現在もお元気でいらっしゃることをお祈りしています。
またお会いできますように。